最高裁判所第二小法廷 昭和37年(オ)588号 判決 1963年9月27日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人加藤充、同佐藤哲の上告理由第一点について。
原審認定の事実関係のもとで、建物の賃借人は賃貸人の所有にかかる敷地又はこれに接続する賃貸人所有地上に賃貸人に無断で建物を建築し得ないとした原判決の判断は、正当であり、本件無断建築にかかる建物の建坪が約六坪であることを考え併せて、右無断建築行為を以て賃貸人の信頼を裏切り本件建物賃貸借の継続を著しく困難ならしめる不信行為と解するを妨げないとし、該不信行為のあつたことを理由とする被上告人の上告人に対する賃貸借解除の意思表示を有効とした原審判断は首肯できる。所論は、独自の見解に基づくものであつて採用できない。
同第二点について。
所論は、原審で主張なく従つて認定判断のない事情を掲げて原判決の前示正当な判断を非難するにすぎず、採用の限りでない。
同第三点について。
被上告人らの本訴請求が権利濫用であるとの上告人主張を排斥した原審判断は、正当であり、所論は独自の見解に基づいて右判断の違法をいうにすぎず、採用できない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外)